|
ヨーロッパ、アメリカ、中国、台湾、韓国、もちろん日本も例外ではありません。偽札を見抜く力が必要な時代になりました。 残念なことですが、組織犯罪のターゲットになりやすいのが紙幣です。歴史的には、戦争により敵国の攪乱をまねくために国家が偽造紙幣を作ったこともあります。為替管理を狂わし、国益をも壊しかねない偽札に対抗するため、現代の紙幣にはさまざまな防止策が組み込まれています。ここでは、偽造防止に役立つ機能の一部をご紹介します。 |
凹版印刷 |
一般の印刷は平版凸版などの手法を用います。 紙幣印刷では、一部を凹版と呼ばれる凸版とは逆に彫刻された(判に傷を付けた)部分にインキを流し込み印刷しています。印刷後は、インキ部分が盛り上がるために手触り印刷部分を感じることができます。 下の写真は2004(平成16年11月1日)発行の野口英世、樋口一葉、福沢諭吉の紙幣(E券)の凹版部位です。特にインキが盛り上がった印刷を深凹版印刷と言います。「壱万円」のように額面が印刷されている部位に採用されました。 |
![]() ![]() ![]() <E券 表面左右上> ![]() ![]() ![]() <E券 表面左右下> ![]() ![]() ![]() |
【NEWS】 なお、上記画像一番下は目の不自由な方用の識別マーク 触ることで金種の判別ができそうですが、その向上の為、国立印刷局では関係者からの意見聴取をしているそうです。その話を裏付ける事実として、千葉県にある大学の教授によるデザイン心理学セミナーにて印刷局へ協力したこと、もしかすると2020年東京オリンピック前に新札をリリースする可能性がある話を聞くことができました。微妙なリークですが、それが事実なら少なくともマイナーチェンジはあり、場合によるとデザイン変更もある得ることになります。大きなデザイン変更であるなら、識別機メーカは大忙し、株価にも影響しそうです。 |
識別マーク |
下の写真は2024(令和6年7月3日)発行のF券。ピンクで囲った場所が識別マーク。深凹版印刷を採用した斜め線は、触っただけでインクの盛り上がりをザラザラと感じます。偽造防止策は勿論ですが、金種で配置が換わるので視力障害の度合いや障害健常の区別無く便利な存在と思えます。 |
特殊インキ印 |
必ず印刷されている朱色の丸印。これは日本銀行総裁の印章です。特殊なインキで印刷されていて、紫外線(ブラックライト)をあてると輝きます。裏面は、発券局長の印章です。 なお、表面の印章は、複合機(カラーコピー)による紙幣の複写を防止機能もあり、ユーリオンとの併用で安易な偽札作りを防止するのに役立っています。 |
彩紋模様 |
コンピュータを使った彫刻機で模様を描いています。微細な模様が偽造を困難にしています。 |
色合い |
ハデな色彩を使わず中間色を多用することで複写機やスキャナー等による安易な複製を防ぎます。D券の壱万円札の表面には10色ものインキが使われているよです。 |
パールインキ |
平成12年7月19日に発券された二千円札、平成16年11月1日に発券されたE券の一万円札と五千円札と千円札に採用されている偽造防止技術で、傾けるとピンク色が見えるようになります。 |
ホログラム |
平成16年11月1日に発券されたE券の一万円札と五千円札にはホログラムが採用されています。このホログラムは既にクレジットカードなどではおなじみの偽造防止技術です。光の当たり具合で模様や色がキラキラと変化します。 |
3Dホログラム |
令和6年年7月3日に発券されたF券には3金種全てに3Dホログラムが採用されました。左右に傾けてホログラムを見ると肖像を立体的に見ることができます。 |
潜像模様 |
平成16年11月1日から流通を開始したE券には潜像模様が採用されています(既に二千円札には使われている偽造防止技術です)。見る角度により数字が見えてきます。 |
マイクロ文字 |
通常の複製技術ではコピーできない、小さな文字。紙幣には肉眼では見えにくい文字が用いられています。例えばE券1万円札表の右上「10000」の下にある線は「NIPPON GINKO」と印刷されています。10倍以上のルーペで見ることができます。 |
F券のマイクロ文字はE券よりも更に微細になり場所によっては10倍では厳しいくらいの技術が施されました。マイクロ文字の場所は下記○の位置にありました。 |
下の写真は、F券のマイクロ文字のクローズアップ 左から千円(01)、五千円(08)、一万円(16) |
3Dホログラム マイクロ文字 |
ホログラム内にもマイクロ文字が隠れています。 下記は一例です。 |
二千円札の光学的変化インキ |
見る角度で「2000」の色(青緑と紫色)が変化する。 |
<メモ> |
カラー複写機の技術は日進月歩と云えます。そのクオリティーは、オリジナルとの違いを無くしています。さらに、最近ではパソコンの普及に伴い、カラー印刷も容易になりました。犯罪防止として、カラー複写機では紙幣など証券の複写ができないように工夫されています。仮に複写を試みると印刷物が真っ青になったりし、警告メッセージが表示されます。
個人でカラー印刷をする場合、その多くはカラーインクジェット方式やインパクト方式による安価な手法となります。クオリティは悪くひと目で真券でないことがわかります。 |
発光インキによる印とマイクロ文字による偽札防止策は、平成5年からのD券で追加された技法です。 それ以前のD券には採用されていません。 |